IBDネットワークが発行した患者の就労を支援する冊子「わたしのトリセツ」

 5月19日は世界IBDデー。IBDは、腸を中心に消化管の炎症を繰り返す炎症性腸疾患のことを指す。10~30代と若い世代の発症が多く、症状が心配で就職活動ができなかったり、職場の理解が得られなかったりするなど、就労で困難を感じる患者も少なくない。そんな患者を支援しようという取り組みも広がりつつある。

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 IBDにはクローン病と潰瘍(かいよう)性大腸炎があり、潰瘍性大腸炎は安倍晋三元首相が患ったことでも知られる。日本では推計29万人のIBD患者がいるとされる。

 腹痛や下痢などが主な症状で、日常生活への影響が大きい。働き盛りの患者を支援しようと、患者団体のIBDネットワークは昨秋、就職活動や就労継続を支援する冊子「わたしのトリセツ」を発行した。

 全国のIBD患者15人が編集委員になり、議論を重ねて作り上げた。患者の体験談や、自分を知るためのワーク、病気の伝え方のヒントなどが盛り込まれている。

「治療と仕事を両立」7割 苦労も

 福岡県に住む野口信之祐さん(32)は、12歳の時にクローン病を発症。「中学・高校はほぼ腹痛で過ごした」という。これまでに4回の手術を重ね、大学時代の就職活動は、入院の時期と重なってうまくいかなかった。

 20代は家にこもる生活が続いたが、ここ1~2年は症状が落ち着いた状態を維持している。今は就労移行支援事業所のスタッフとして働く。

 「難病患者というと不安な顔をされるが、寛解状態であれば働けることが多い。企業にはまず採用してみてほしいと思うし、患者も自分の病気や必要な配慮を説明できるようになることが大切です」と話す。

 ヤンセンファーマが2023年、治療をしながらフルタイムで働くIBD患者200人に行ったアンケートでは、就職・転職活動中にIBDを発症していた127人のうち半数超が、「苦労した・困ったことがあった」と回答。苦労した点として、「体調を崩してしまい、就職・転職活動ができなかった」という人が3割ほどいた。

 一方で、「今のところ、治療と仕事の両立ができている」という項目に対し、200人のうち7割が「当てはまる」「やや当てはまる」と答えた。

 佐賀県に住む吉村ひなたさん(24)もクローン病だ。「トリセツ」の中で、自分の体験をつづり、「強みを作る」ことを患者に勧めた。高校で応援団に入りたいと思ったが、最初は体調が心配でできなかった。症状が安定した3年生の時に自ら立候補し、周囲に心配されながらもやり遂げた。

 「面接で話す話題にもなるし、病気になってもできることがあるという自信になった」

 今は就労継続支援A型事業所で、製菓の仕事をしている。今後、一般企業での就労をめざすという。

 「わたしのトリセツ」はインターネット上でダウンロードできる。(https://ibdnetwork.org/2024/11/4089/

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