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学生に向けて、会社の説明をする採用担当者=2025年6月24日午前8時17分、さいたま市桜区の埼玉大学、杉原里美撮影
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 学生を採用したい企業に協賛してもらい、朝食を100円で提供する。埼玉大学(さいたま市桜区)の「朝活プロジェクト」は、企業と学生双方にとってメリットがあるユニークな企画だ。実際に、学生の内定につながった例もあるという。

 24日早朝、同大の生協第二食堂には、学生の長い列ができていた。限定120人が、学生証を見せて100円を払い、カウンターで朝食を受け取る。この日のメニューはショウガ焼き、インゲンのゴマあえ、みそ汁とご飯の定食だ。主菜が肉の日は人気があるという。

 「インターンシップは時給1800円、交通費も支給します」

 ATMの運用管理大手「SocioFuture」(東京都港区)の採用担当者が、スライドを使って企業の魅力や採用活動を説明すると、学生たちは、箸を動かしながら耳を傾けた。

 群馬県出身の経済学部4年黒崎翔太さん(24)は、朝活に10回以上参加している。「自炊せずに安く朝食を食べられるのはありがたい。私は就活を終えていますが、業界トップの企業が一次選考を免除してくれることを知ることができて、いい機会になった」と話す。

 「SocioFuture」は昨年、新卒採用課の森田麻美課長(36)が、同大のメールマガジンを見て朝活の存在に気づき、協賛を申し込んだ。すると、話を聞いた女子学生が選考に来て、同社は内定を出したという。「他大学のイベントでは、内定までつながる可能性は少なく、魅力を感じた」と、2回目の参加を決めた。

 森田課長は「今は学生の売り手市場で、3~5社の内定が当たり前。多くの企業を見る気がない学生にも興味を持ってもらいたい」と話す。「食べ終わった後も、うなずきながら熱心に聞いてくれた」と、今回も手応えを感じたという。

 朝活が本格的に始まった昨年度は、19社が協賛した。今年は5月12日~6月27日の前期で13社が協賛。キャリアセンター長の石阪督規教授によると、食材を提供したり、並んでいる学生にグッズを配ったりする企業もある。話を聞いて興味が湧いた学生は、食事の後、企業に個別相談をすることもできる。後期に向けて、既に10社以上の問い合わせが来ているという。「就活セミナーでは、ブースに来る学生の数は限られる。企業にとって、100人以上の学生の前でアピールできる機会は珍しいのでは」

 朝活は、「学生が地元に就職してくれない」という県内企業の悩みを受けて、坂井貴文学長が発案した。実際に協賛企業の約半数は県内に本社がある企業だ。坂井学長によると、県内企業は、企業間で取引をする「BtoB」が多く、消費者が顧客ではないため、学生に名前を知られていないが、優良な企業が多い。坂井学長は、「実際に内定が出るなど、朝活で期待した効果が表れている。まずは名前を知ってもらい、学生に就職を考えてもらう一つのきっかけになれば」と話す。

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