インタビューに答える江崎玲於奈さん
今年、100歳を迎えたノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈さんが8月、朝日新聞のインタビューに応じた。今年は、江崎さんが30代の時に、実験で正しさの証明に貢献した「量子力学」の提唱から100周年にあたる。かつてアインシュタインさえ疑ったミクロの世界の基礎理論は、半導体技術の発展を通して現代社会を支えている。江崎さんは「100%の自信はなかったが証明できると信じていた。予測不可能な問いへの挑戦こそ科学の魅力だ」などと当時をふり返った。
量子力学は、原子や電子などミクロな世界のふるまいを説明する物理法則。1925年、ドイツの物理学者ハイゼンベルクらによって提唱された。アインシュタインの相対性理論とともに、現代物理学の双璧をなす基礎理論になっている。
だが、粒子のふるまいは観測するまで確率でしかわからないという、直感に反するような特徴から、アインシュタインすら「神はサイコロを振らない」と懐疑的だったことで知られる。
ところが57年、量子力学でしか説明できない、電子の「トンネル効果」という現象を初めて半導体の接合部で実証したのが、今のソニーにあたる東京通信工業に在籍していた江崎さんだった。量子力学で予言される通りに、電子が膜をまるでトンネルをすり抜けるかのように移動する現象だ。
「非常に不思議で、穴も開いていない膜を、実在する電子が通り抜けることができる。それまでの物理学では考えられない現象です。よし、オレがやろうと、研究者の中で競争になっていた」
江崎さんの発見は、量子力学…