「俺も、あれぐらい話せたらな……」。米国・ワシントンのホテルのラウンジで、石破茂氏が漏らしたことがあった。彼の秘書が、流暢(りゅうちょう)な英語でスタッフと会話していた。11年前の2014年4~5月、自民党幹事長として米国を訪問した夜、同行記者とテーブルを囲んだ時に何げなく出た一言。私も英語には苦手意識があるので、その気持ちが理解できた。何げない一言が今も記憶に残るのはそのせいだろうか。
5泊6日の米国訪問で、民主、共和両党の上下院議員らと相次いで会談した。オバマ政権で副大統領だったバイデン氏ともホワイトハウスで面会した。
当時の安倍政権は、集団的自衛権の行使容認のための憲法解釈変更、そして安全保障法制の整備を進めようとしていた。訪米の目的は、与党の立場から、安倍政権の政策方針を米国に伝えるというものだった。もちろん、「ポスト安倍」候補の一人として自身の存在感を示すという狙いもあっただろう。
その訪米で印象に残ったのは、2日目にあった講演会のことだ。
日米の政界関係者、記者らを…