朝日歌壇の半世紀を振り返るイベントで語る馬場あき子さん=2025年4月19日、東京都中央区の朝日新聞東京本社読者ホール、吉本美奈子撮影

 歌を詠むうえで大切なこととは。半世紀にわたる選歌の中で、心に残った作品とは――。3月まで朝日歌壇の選者を務めた歌人の馬場あき子さん(97)が、読者を前に、飾らぬ言葉で歌作りの心得を語った。東京・築地の朝日新聞社読者ホールであった記者サロン「馬場あき子さんと振り返る 朝日歌壇の半世紀」。ユーモアを交えた潑剌(はつらつ)とした語りで、会場を何度も沸かせた。

【配信中】記者サロン「馬場あき子さんと振り返る 朝日歌壇の半世紀」申し込みはこちら

記者サロン「馬場あき子さんと振り返る 朝日歌壇の半世紀」は7月31日までオンラインで視聴可能です。記事では触れられなかった入選作品の読み解きや、戦時中に友人から教わった長唄「越後獅子」を馬場さんが口ずさむ場面などもご覧いただけます。

 歌を詠む上で心がけていることは何か。こんな問いかけに、「心がけると、つまらない歌しかできないです」。首都圏だけでなく、東北や九州からも詰めかけた約100人の参加者を前に、きっぱりと語った。

 「ぼんやりしていれば歌は向こうからくるんです」。例えば、窓の外で木や葉っぱがそよいでいる。それを見ているだけでも「歌の種は体の中に自然に埋まってくる」のだ、と。「心に収めていると出てくるんです。日頃生きていることは全てネタだと思えばいい。時々振ってみると音がする。そうすると歌ができるんです」

 はじめて詠んだ歌もそうだった。

 山ざくら花散り果てし木の幹…

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