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国境の峠クンラ(5435メートル)を越えてチベットに向かうヤクの隊商。写真奥に河口慧海が日記に記した「二つ並んだ湖」と推定されるクン・ツォが見える=2006年9月、根深誠さん提供

 1900(明治33)年、仏教の源流を求め、日本人で初めてチベットに入った僧侶がいた。河口慧海(えかい)(1866~1945年)。まともな地図もなかった時代、山深く、鎖国状態だったチベットに、どのルートから入ったのか。30年にわたる現地調査で、謎に包まれた足跡を解明した登山家が、その記録をまとめた本を出版した。

 この登山家は、青森・秋田の両県にまたがる白神山地を世界遺産に導いた立役者でもある根深誠さん(77)。青森県弘前市生まれ。子どもの頃から山歩きが好きで、明治大学では冒険家・植村直己が輩出した山岳部に所属し、ヒマラヤ未踏峰6座に初登頂も果たした。

 80年代は、地元・白神山地を横切る青秋林道建設の反対運動を展開した。大規模計画は白紙撤回となり、原生的な森林が守られた白神山地は93年、日本初の世界自然遺産に登録された。

 慧海のチベット入りの謎を解…

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