昨季の日本オープン時の小木曽喬=2024年10月12日、東京ゴルフ倶楽部

 13歳で飛び込んだ先に、将来を広げる出会いがあった。

 昨年ツアー初勝利を遂げた28歳の小木曽(おぎそ)喬(たかし)が「僕の最大のターニングポイント」と振り返るのは、中学生時代に自ら転校することを決めたことだ。

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 愛知県出身。名古屋市立の中学校に通いながら、ゴルフスクールに通った。ジュニア時代はなかなか大会で勝てず、「レベルが低かった」。

 競技をはじめるきっかけとなったテレビの向こう側の選手たちは、アマチュア時代から成績を残している人ばかり。そんな風になりたくても、遠い場所にいる自分がいた。

 うまくなりたい一心で目星をつけたのが、ゴルフ部が強豪で知られる「福井工大付属福井高校」。調べると、そばに付属中学もあると分かった。

 「ジュニアでうまい人はいい高校に行く」。それよりも先に、環境を求めて飛び込んだ。

 中学3年から福井工大福井中に転入し、寮生活が始まった。同部屋だったのが、当時高校3年生でここ数年は欧州ツアーで活躍する川村昌弘だった。

 「川村さんのゴルフを見たときの衝撃って、たぶん今、何を見ても越えないんですよ」

 3学年の差を考慮しても、はるか遠くのレベルに感じるほどに球の質がまるで違った。意識の高さもそう。朝6~7時にはランニングや練習に向かう川村に小木曽も付いていったが、「しんどくて2日でだめになりました」と笑う。

 出会った年に川村はプロに転向。翌年には日本ツアーの賞金シードを手にした。「このレベルに行かないといけない」

 13歳にして、川村を通してプロで活躍できるレベルやそこまでの道筋が見えたことは大きかった。偉大な先輩の背中を追い始めた小木曽は、どんどんと力を伸ばした。

 「今思えば、家族が転校を許してくれたことが本当にありがたかった」

 高校3年生だった2014年日本選手権では、日本選手で当時最年少の17歳115日で日本アマチュア選手権を制覇し、翌年にプロに転向した。

 ツアーでは若手の台頭にももまれながら、昨年6月に初優勝。昨季の平均パット数はツアー選手で2番目に少なく、ショートゲームを強みにバーディーの獲得率で昨季賞金王の金谷拓実を上回った。

 5月31日にあったミズノ・オープン3日目では、強風で多くの選手が苦しむなか、出場選手最高の6アンダーをマーク。33位から一気に3位まで順位を上げ、優勝争いに名乗り出た。

 今大会は、有資格者を除く上位3人に7月の全英オープンの出場権が与えられる。「すごく行きたい。同じ場所に行きたいですね」。13歳の目に焼き付いた先輩は、いまも目線の先にいる。

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