1300年以上も湯守の一族により代々受け継がれてきた世界最古級の温泉宿があると聞いた。奈良の大仏より古い温泉とは、どんなところなのか。北陸のとある温泉地を訪ねた。
石川県小松市の中心部から南へ約10キロの山あいにある粟津(あわづ)温泉。その中心部にお目当ての旅館「法師(ほうし)」があった。
日帰り湯を利用し大浴場へ。泉質はナトリウム硫酸塩泉。笏谷石(しゃくだにいし)の湯船に流れ込む無色透明の湯は、熱すぎずぬるすぎず、いつまでも入っていられそう。日々の疲れが流される。
「柔らかいお湯で、湯上がりもいつまでもぽかぽかと温かいですよ」
国の登録記念物にもなっている庭園を眺めつつ一休みしていると、阪覚(さかさとる)・総支配人が解説してくれた。
46代まで代々の当主が同じ名を襲名
伝承によると、その歴史は奈良時代初めにさかのぼる。718年(養老2年)、白山に入り修行をしていた越前の高僧・泰澄(たいちょう)大師の夢枕に白山大権現が立ち、こう告げた。
「ふもとの粟津という村に霊…