奈良県立美術館で開催中の特別展「生誕100年 中村正義(まさよし)―その熱と渦―」(同館主催)に、展示作品のモデルになった女性が訪れ、68年前の「自分」と対面した。日本画家・中村正義(1924~77)の遺族のはからいで実現し、アトリエに立った記憶が鮮やかによみがえった。
女性は滋賀県栗東市に住む西出文子さん(83、旧姓中湖)。1957年、中村の名古屋市の自宅で「お手伝いさん」として働いていた。当時、中村は結核の療養を終えて退院したばかりで、復帰作に取り組んでいた。
「突然『ふーちゃん、ここに立ってモデルになって』と言われて、びっくりした」と文子さん。中学校を卒業したての15歳だった。中村と、助手としてつきそう妻のあやさんの前で、赤い襦袢(じゅばん)姿でじっと立ち続けた。「次に『ヌードになれるか』と言われたけれど、『いやです』とお断りしたのを覚えています」
作風の転機に
完成した作品のタイトルは「…