薩摩焼の里として知られる鹿児島県日置市の美山地区で、窯元の15代沈壽官(ちんじゅかん)さんらが、天然の「樟脳(しょうのう)」をつくる工場を新設する。薩摩焼と同様に、400年以上前に朝鮮から連れてこられた陶工が美山で国内生産を始めた歴史があり、先代の思いも受け継ぎながら「復活」にこぎつけた。
樟脳はクスノキの木片などを蒸留、精製して得られる化合物の結晶で、防虫剤や防腐剤、香料などに用いられる。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に薩摩に連れてこられた陶工が、焼き物とともに美山地区で生産を始めたと伝わる。江戸時代は金や銀に次ぐ重要な輸出品だったという。沈壽官窯の近くには「樟脳製造創業之(の)地」の石碑が立つ。
1962年まではたばこと同じく国の専売制がとられ、多くの業者が生産していたが、石油系の安価な防虫剤が出回ると、天然の樟脳づくりは次第にすたれた。現在は福岡や佐賀など4カ所を残すのみになっているという。
薩摩焼の代表的窯元である沈…