現場へ! 憲法を手にⅢ①
「被害者と声を上げよう」
3月21日午後。冷たい風が肌を刺す東京・永田町の首相官邸前で、抗議の声が上がった。参加したのは、「不良な子孫」の出生防止を目的に掲げた旧優生保護法の下、強制的に不妊手術を受けさせられた被害者と支援者たちだ。
国に謝罪と補償を求める抗議の輪の中に、弁護士の新里宏二(72)がいた。全国12の裁判所で提起された、旧優生保護法の違憲性を問う訴訟の弁護団共同代表だ。
そこに、宮城県に住む70代の被害者、飯塚淳子(仮名)の姿もあった。知的障害者施設を出た後、住み込みの就職先の「職親」に連れられ、16歳で不妊手術を強いられた。
新里と飯塚が出会ったのは11年前。2013年8月、弁護士らによる無料の生活相談会を飯塚が訪れ、応対した新里に、懸命に訴えた。「若いときに、知的障害を理由に不妊手術を受けさせられた」
この出会いが、その後の被害者救済に向けた動きに、大きな意味を持つことになる。ただ当時、新里には、旧優生保護法の知識はなかった。
同年9月、新里は飯塚と再び…