2000年の、夏のことだ。

 19歳だった関茂樹さん(43)は明け方、体中に電流が走った感覚に襲われ、跳び起きた。

 全身に蕁麻疹(じんましん)が広がっていて、体が異様に重たい。何かが全身にまとわりつくような、憑依(ひょうい)されたような。圧倒的な倦怠(けんたい)感が、その日を境に消えなくなった。

 「これは、何なんだ?」

 それから、一睡もできなくなった。

暴走族からの引退、その矢先に

 兄と両親と4人暮らし。元々サッカー少年だったが、中学を卒業後に暴走族に入った。「悪いこと」が好きだったわけではない。でも、先輩の特攻服がカッコよかった。

 地域の中心的な一派で、「特攻隊長」をつとめた。毎晩のように爆音でバイクを乗り回す。家庭裁判所にもたびたび呼び出されては、母親が頭を下げた。高校にはほとんど行かず、昼間は力仕事のアルバイト。そんな生活を3年余り続けていた。

暴走族時代に着ていた服。腕章には「引退記念」の文字も=横浜市

 その夏は、転機だった。少年院や鑑別所に入っていた同期10人が久しぶりにそろった。「そろそろ潮時かな」と、一斉に暴走族から足を洗うことに。7月、盛大な「引退式」をした。バイクを花で飾り、近隣の暴走族ら総勢300人ほどが集まって、横浜ベイブリッジを走り抜けた。

 これから、今までとは違う新しい人生が始まる。もう、親に迷惑をかけることもなくなる――。そう思っていた矢先、体に異変が起きた。

 統合失調症の啓発活動に取り組むNPO法人シルバーリボンジャパン。代表の関茂樹さんも、10~20代のころ、心の病に苦しんだ。リカバリーまでの道のりは。

19歳、つのる焦り 追い詰められて指を

 文字どおり、一睡もできない…

共有
Exit mobile version