大編成の学校と、同じ演奏はできない。研ぎ澄ましてきたのは、ひとり一人の音だ。
1人が2人分、3人分の豊かな音を。
19日に、全日本吹奏楽コンクールの舞台に19人で立つ宝塚市立中山五月台中(兵庫)。打楽器の有吉十和子さん(3年)は、部の演奏を初めて聞いた時の衝撃を、鮮明に覚えている。
中学進学を前に足を運んだ定期演奏会。ホールいっぱいに鳴り響く迫力のある音は、大人数の演奏と錯覚するほどだった。
「どうして、こんな演奏ができるんだ」。その秘訣(ひけつ)を探ろうと思って入部した有吉さんに、最初に課された練習は「整列番号リレー」だった。
並んだ順に「いち、に、さん」と声を出し、終わるまでの時間を計る。最初は恥ずかしがる子や全然声が出ない子がいるが、それを毎日、毎日。次第に速くなり、声も大きくなっていく。
みんなの前で声を出し、みんなで一つのことを成し遂げるのを「面白い」と感じるための練習だった。
多くの部員は、吹奏楽の未経…