Smiley face
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 幼いころから、仏間に飾られた若くりりしい男性の遺影が気になっていた。享年19。なぜ、こんなに若くして亡くなったんだろうか。

 北九州市小倉北区でかまぼこ店を営む森尾和則さん(76)は、我が子のように可愛がってくれた伯父の伊三郎さんの自宅に遊びに行くたび、その遺影が気になっていた。

 遺影は、森尾勝磨さん。伊三郎さんの長男で、和則さんのいとこにあたる。自身が生まれる前に亡くなり、会ったことはない。親族に聞いても、詳しくは教えてくれなかった。ただ、「原爆で死んだ」とだけ。

 旧制小倉中(現在の福岡県立小倉高)から長崎医科大(現在の長崎大医学部)付属医学専門部へ進学した勝磨さんは、1945年8月9日、大学で講義中に被爆した。

 それ以上の詳しいことは知らなかった。和則さんは80年、伊三郎さんが大正9(1920)年に小倉の旦過市場で創業したかまぼこ店を、2代目の父から引き継いだ。渋々だった。なぜ自分が店を継ぐことになったのか、との思いをきっかけに、先祖のことが気になり、調べ始めた。

仏壇に残された手紙

 遺品を探すと、伯父の自宅の仏壇にあった20センチほどの木箱から、何枚もの手紙やはがきが出てきた。

和則さんは残された手紙をたどり、勝磨さんの残したある遺言について知ることになります。

 宛先は、伯父の伊三郎さんで…

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