その男性は2023年の夏、2カ月間で3度逮捕された。

 福岡県内で一人暮らしをする70代。両親は他界し、兄弟とは絶縁状態だった。

 最初の事件は7月末。

 男性は当時住んでいた部屋から2.5キロほど離れたところにある、以前住んでいたアパートの大家の自宅前で、「燃やしてしまえばいいんやろ」などと迫った。脅迫の疑いで現行犯逮捕された。

 8月下旬には、自身が乗ったタクシーの運賃2030円を支払わず、詐欺容疑で現行犯逮捕。

 さらに1カ月後の9月下旬。再び大家の自宅周辺をうろつき、つきまとうなどして、県迷惑行為防止条例違反の疑いで現行犯逮捕された。2度目の逮捕後に釈放された翌日のことだった。

 3回とも不起訴処分となって釈放されたが、男性はなぜそんな状態に陥っていたのか。県警や男性を支援していたNPO法人、近所の住民などへの取材から、男性の足取りをたどった。

男性がたびたび訪れたというアパート近くの公園=2024年2月8日午後3時23分、福岡県、伊藤未来撮影

 20年ほどを過ごしたアパートから男性が転居したのは、老朽化して取り壊しが決まったためだった。部屋を離れることに応じた男性の心身に、少しずつ異変が起き始めていた。

 男性は、アパートを出て有料老人ホームに入居したが、施設の規則を守らずスタッフに刃物を向け、退去を余儀なくされた。

消えないアパートへの思い やがて周囲とのトラブルが…

 ほどなく、困窮者支援のNP…

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