奈良県下北山村の国道169号で2人が死傷した土砂崩れは23日、発生から1年となり、現場では南正文・同村長や県職員らが献花に訪れた。現在は仮設橋が設置され、一般車両の通行が可能になっているが、事故やその後の通行止めの影響は大きく、住民らからはいまなお不安の声も聞かれた。
土砂崩れは昨年12月23日夜に発生。道路沿いの斜面が崩れて推定4千立方メートルの土砂が流れ込み、2台の車が巻き込まれて男性1人が死亡、1人が負傷した。激しい寒暖差で地中の水が凍ったり解けたりして地盤が緩む「凍結融解」が一因である可能性が、県の有識者会議で指摘された。
現場では通行止めが半年ほど続いていたが、崩落した斜面から離れた仮設橋が設置され、6月から一般車両の通行が可能となっている。本格復旧に向けては、国が約2・8キロのトンネルを造ることが発表され、2029年に完成予定だ。
南村長は現場で黙禱(もくとう)を捧げ、報道陣に「亡くなられた方に哀悼の意を表し、けがをされた方にお見舞いを申し上げる」と述べた。そして、「通行止めになって道路のありがたさを痛感した。(通行止めの間は)観光客が全然来なくて、宿泊業、飲食店、小売店などに大きな影響があった」と、この1年を振り返った。
サッカー・J3の奈良クラブのキャンプが中止される影響もあったが、6月に仮設橋で一般車両の通行が可能になって以降は「だいぶ通常の生活に戻ってきた」という。それでも「インターネット上では今でも通行止めになっていると表示されることがある。今は仮設橋があって通れることを県内外の方に発信していきたい」と話した。
村内でガソリンスタンドを経営している村議の平井清さん(59)は、「生活は元に戻ってきているけれど、今でも車の通行量は減っているように感じる」と話す。「(169号は)命の道と言われているだけあって、通れないときは大阪に住む孫に会いに行くのも大変だった。また崩れたらどうしようと思う」と不安をにじませた。
この日、県庁で取材に応じた山下真知事は、「事故を教訓として、道路の安全対策に万全を期して参りたい」と述べ、道路の点検方法の改善を検討しているとした。