翠星の出口海音主将=2025年7月16日午後3時20分、石川県立野球場、杜宇萱撮影

(16日、第107回全国高校野球選手権石川大会2回戦 北陸学院10―0翠星=五回コールド)

 五回裏1死三塁。あと1点奪われるとコールド負けが決まる。四回からマウンドを任された翠星(石川)の出口海音(かいと)主将が相手に投げ込んだのは、自らが選んだスライダーだった。「1番自信のある球を、信じて投げた」。左飛に抑え2死に。次打者にも同じ変化球で挑んだ。「無心に投げた一球だった」。だが、打球は中前にはじき返され、試合終了となった。

 昨年3月、腰に痛みを感じ、腰椎分離症と診断された。昨夏は大会に出場できなかった。悔しさと、治らないかもしれないという不安でイライラしたが、悩みを打ち明けたメンバーから「絶対大丈夫や」と励まされ、気持ちを立て直した。

 親と顧問から「できることを積み上げろ」と助言を受け、腰を動かさないで済む肩や足のストレッチ、筋トレなどに取り組んだ。超音波治療などを受けて半年後には完治。練習を再開して春から試合に出られるようになった。

 今夏、翠星は1回戦で能登に10―3で勝利し、選手権石川大会で2016年以来の初戦突破を果たした。

 この試合では適時打1本と二塁打2本の計3安打4得点と貢献した。「一瞬一瞬に責任を持ってプレーした。初戦に勝てて、幸せな夏だった。チームとしても歴史に残るこの光景は、一生忘れられない。このチームで野球ができて、すごく良かった」と充実した表情で話した。

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