大阪府岸和田市長選(30日告示、4月6日投開票)の構図が見えてきた。2度の不信任決議を受けた前市長が出馬を表明。対立候補の1人を自民、公明、共産の地元議員らが後押しする。兵庫県知事選で問題視された「2馬力選挙」が行われる可能性もある。
今回の選挙は前市長の永野耕平氏(46)の失職によるものだ。永野氏は昨年11月、政治活動で関わった女性と性的関係を続け、謝罪して解決金500万円を払う内容で和解。大阪地裁は「(永野氏は女性の)雇用を左右しうる優越的な立場にあった」と指摘。市長が公人で配偶者がいることにも触れ、「非難を免れない」と批判した。
永野氏は過去2回の市長選に大阪維新の会公認で当選。今回の問題で離党勧告処分を受け、無所属での出馬を表明した。
維新は今回、自主投票とする。当初は永野氏への対決姿勢を鮮明にし、候補者を公募したが、適任者が見つからなかったとして断念した。維新関係者は「誰でも良いというわけにはいかない」と漏らした。
自・公・共「反永野」で足並みそろえる
永野氏の再選阻止を掲げて最初に立候補を表明したのは、郵便局長で無所属新顔の佐野英利氏(45)だ。
自民党の元衆院議員・中山太郎氏(故人)の元秘書で、地元の自民関係者が自主的に支援する。自民大阪府連会長の青山繁晴参院議員は23日、記者団に「党として支持を打ち出したいと思ったが、(佐野氏は)完全無所属でいきたいということだった」と語った。
市議会最大会派の公明市議団も、佐野氏支持を決定。共産も府委員会が佐野氏を支援する。自民、公明、共産が「反永野」で足並みをそろえる構図になりそうだ。国政野党第1党の立憲民主党は地元に十分な足場がなく、独自候補の擁立は難しい状況だ。
佐野氏に続き、農業NPO法人代表の花野真典氏(46)も24日、永野氏の再選阻止を掲げて無所属で立候補を表明した。政党の支援は受けない。教育の充実などの政策で支持拡大を図るという。
政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏(57)は20日に立候補を表明した。昨秋の兵庫県知事選で、街頭演説やSNSを通じて斎藤元彦氏(現・知事)を擁護する「2馬力選挙」を展開。結果的に斎藤氏は再選された。自らの当選を目指さず他候補を応援する「2馬力選挙」は公職選挙法の趣旨に反すると指摘されるが、立花氏は今回も「当選する気はない。2馬力選挙と銘打ってもらっていい」と述べ、永野氏を後押しする考えを示した。
その後23日には、自身の動画で立候補を取りやめる可能性に言及した。ただ、その場合も永野氏を擁護する発信を続けるとみられる。
選挙のゆくえはどうなるか。
1回目の不信任決議を受けた永野氏が市議会を解散して実施された今年2月の市議選で当選した24人のうち、永野氏を支持したのは妻の紗代氏1人。その紗代氏の得票は24人中21番目と振るわなかった。大阪維新幹部は「永野氏の集票力はこの程度。勢いはない」と言い切る。
一方、ある市議は「複数の候補者が出ることで、永野氏への批判票が割れる可能性がある。前市長という知名度があるだけに油断できない」と警戒する。