敬虔(けいけん)なクリスチャンが、「唯一人生で、神を疑った瞬間」だった。
2011年3月11日午後2時46分。当時小学3年だった、芥川賞作家の鈴木結生(ゆうい)さん(23)=西南学院大院在学=は、福島県郡山市の自宅2階のコタツでひとり、宿題をしていた。
揺れを感じると、すぐにコタツの中に隠れた。揺れは30秒経っても収まらなかった。「あの揺れ方、『あ、世界が終わる』と思いました」
「結生、結生」。建物の外から、そう叫ぶ両親の声が聞こえた。ただ、どれだけ大声で返事をしても、届いている様子はない。コタツのなかで、恐怖に耐えた。
揺れが続くなか、父親が2階に来た。「世界は終わるのかな」と聞くと「大丈夫だ」。抱きしめられ、初めて安心した。部屋は一変していた。宿題の紙は、コーヒーでぬれていた。
幸い、大きなケガはなく、家族も無事だった。内陸の郡山市は津波の被害もなかった。ただ、東京電力福島第一原発事故が生活を一変させた。
新学期、小学4年のクラスの意見は二分していた。放射線の人体への影響は大丈夫なのか、どうか。体育の時間、校庭に出ても安全か、どうか。
「僕は大丈夫じゃないという…