「中国残留婦人か、残留孤児なんじゃない?」
2019年、留学先の中国・東北師範大学で、森川麗華さん(25)は教授にそう言われた。曽祖母(92)のことを話した時だ。森川さんは思った。
「何、それ?」
聞いたことがある気もする。確か、戦争に関わる言葉だ。でも。
その日のうちに神戸に暮らす母に電話した。「ひいばあちゃん、残留婦人とかなの?」
母はあっけらかんと言った。「そうやで。知らんかったん?」
教授が手渡してくれた本をむさぼり読んだ。作家の城戸久枝さんが、中国残留孤児だった父のことを書いた一冊だ。
「うちも、これなんかな」
満州事変、日中戦争、敗戦、引き揚げ、日中国交正常化……。今に至る、100年近い日中間の歴史が、自分に押し寄せてきた。
中国残留孤児・婦人
戦前、戦中に中国東北部(旧満州)に開拓団などとして渡り、家族と生き別れるなどして戦後、取り残された人たち。中国人に育てられた当時12歳以下の日本人の子どもを「中国残留孤児」、13歳以上だった女性については「中国残留婦人」とした。厚生労働省によると、7月末現在で残留婦人は4168人が永住帰国している。家族を含めると1万1531人。孤児と認定された人は2818人で、うち2557人が永住帰国した。
森川さんは現在、東京大大学…