2027年の世界遺産登録をめざす彦根城(滋賀県彦根市)について、滋賀県と市は11日、国内推薦候補に選んでもらうため、推薦書案を文化庁に出した。9月までに開かれる文化審議会で国内推薦の答申を得たい考えだ。

彦根城=2024年12月12日、滋賀県彦根市、小西良昭撮影

 県によると、世界遺産に登録されるには、まずは国内候補に選ばれることが欠かせない。そのうえで国がユネスコ(国連教育科学文化機関)へ推薦書を出し、世界遺産委員会で審議される。

 文化審議会は23年、確実に登録をめざすため、ユネスコの諮問機関のイコモスから助言を受ける「事前評価制度」を使うよう答申した。

 県と市は、天守、堀、石垣、大名庭園のほか、御殿、重臣屋敷の遺構が残り、大名の統治で平和を実現したことを示す唯一の資産が彦根城だと説明してきた。

 昨年10月に事前評価の結果が通知され、登録の評価基準を満たす可能性があるとされた。一方で、この大名統治システムを彦根城だけで表現できるかが課題だと指摘された。

彦根城単独で登録めざす

彦根城の世界遺産登録に向けた推薦書案を説明する滋賀県と彦根市の担当者=2025年7月11日午後3時26分、彦根市、小西良昭撮影

 これを受け、県と市は今回の推薦書案で、150以上ある江戸時代の他の城と複合したシリアル資産としてではなく、彦根城だけでの推薦をめざすとした。

 推薦書案は200ページ以上に及ぶ。彦根城が大名による統治の仕組みを最も良く示す城であるという説明を厚くした。江戸幕府ができた1603年に徳川家康から築城を命じられたことや、城主の井伊家が大老を務めるなど最側近だった優位性を強調したという。

 県の担当者は「登録に向けた国内手続きが一つ進んだ」と説明。彦根市の小林隆・彦根城世界遺産登録推進室長は「事前評価でもらった課題を克服すべく最善を尽くした」と述べた。

 彦根城が国内の世界遺産暫定リストに載ったのは1992年。翌年、姫路城(兵庫県姫路市)と法隆寺地域の仏教建造物(奈良県斑鳩町)が日本初の世界文化遺産になった。彦根城は国内推薦に届かず、30年以上たっている。

推薦書案のポイント

 ・江戸幕府の決まりに従い、城内で重臣と合議する大名統治システムの説明を充実

 ・他の城と比較。彦根城主・井伊家は将軍を支え続けた最側近でトップクラスの重要大名

 ・大名統治システムは全国共通で、彦根城が最も良くその仕組みを表現できる

彦根市役所の正面にある「彦根城を世界遺産に!」の啓発看板=2025年7月11日午後、滋賀県彦根市、小西良昭撮影

彦根城 世界遺産登録への道のり

1992年   世界遺産暫定リストに記載

2024年10月 諮問機関イコモスから事前評価

 25年7月 推薦書案を文化庁に提出

  9月まで 文化審議会で国内推薦を審査。9月末までにユネスコに推薦書暫定版を提出

 26年2月1日まで ユネスコに本推薦書を提出

 26年夏 イコモスの現地調査

 27年春 イコモスの勧告

 27年夏 世界遺産委員会で登録可否の審議

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