第107回全国高校野球選手権徳島大会(朝日新聞社、県高校野球連盟主催)が12日、徳島市のむつみスタジアムで開幕した。出場28校の選手らが堂々と入場行進をした。この日は開幕試合の1回戦1試合が行われ、池田が徳島科技に大勝した。
開会式では前回優勝した鳴門渦潮の長嶋颯斗主将(3年)が優勝旗を返還。県高野連の多田巧会長は「試合は時に厳しいもの。しかし、一球一打がみなさんの人生のかけがえのない財産になる。悔いのないよう戦い抜いてください」とあいさつした。
県高野連は同日、今大会の一部試合の時間変更を発表した。
19日(1回戦)、20、21日(2回戦)の午後2時半開始の3試合と、24、25日(準々決勝)の午後1時開始の2試合、27日(準決勝)の午後1時半開始の1試合を、いずれも同3時からの開始に変更する。最も気温が高い時間帯を避けるためとしている。
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「戦争やコロナ禍で中止になったことを思うと、夢を追いかけることができる今に感謝の思いでいっぱいです」
徳島商の岡本歩樹(いぶき)主将(3年)は選手宣誓で選手権大会の長い歴史を踏まえ、いまグラウンドに立てることへの感謝を表現した。「仲間と心を一つに、一日でも長く大好きな野球ができるよう、最後の一球まで力を尽くす」と締めくくった。
宣誓の文案は、国語の先生や部員らと相談して考え、教室などで大きな声で練習して本番に臨んだ。式の後、「いい大会の始まりになればという思いでメッセージを考えた。一戦必勝で勝ち上がって、甲子園出場につなげたい」。
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開幕試合で始球式を務めた池田のマネジャー北田千紘さん(3年)。昨夏、池田の中堅手を務めた兄悠人(はると)さん(19)のユニホームを借りて、マウンドに上がった。
振りかぶって投げると、山なりのボールがバウンドしながら捕手に届き、表情を緩ませた。「めったにない経験。ものすごく緊張したけど楽しめた」
悠人さんの影響で小学校2年生で少年野球チームに入った。池田で野球に没頭する兄を見て、「マネジャーになりたい」と思った。始球式の大役が決まり、筋肉痛になりながら、部員や弟の瑛人さん(10)とキャッチボールを続けてきた。
始球式を終えた後、開幕試合の徳島科技戦の記録員として選手たちを支え、チームは大勝した。次はシード校の鳴門渦潮戦。「絶対に勝ちたい」。そう力を込めた。
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(12日、第107回全国高校野球選手権徳島大会1回戦 池田14―4徳島科技)
春の県大会で2勝を挙げ、上位を狙う徳島科技は「県内一元気なチーム」を掲げて古豪の池田に立ち向かった。
しかし、初回から想定外の展開となった。相手に6四死球を与え、5安打を浴び、いきなり10点を奪われた。初回だけで3投手をつぎ込む苦しい立ち上がりとなった。
しかし、直後の二回に反撃。3点を奪って食い下がる。「焦らず1点、1点」と楠漣主将(3年)は仲間を励まし続けた。
2点を取らなければコールド負けになる五回表。チームに再び元気が戻って来た。
2死一、二塁とチャンスを広げ、武田亮選手(2年)が適時打を放ち、1点を返した。「詰まらされたけど、後ろにつなぐ気持ちでくらいついた」。スタンドの応援も「アゲアゲホイホイ」で最高潮に達したが、反撃もここまでだった。
試合後、北谷雄一監督は「相手がこちらをよく研究していて、(試合の)入りが難しかった」としつつ、「五回は次につながるいい攻撃だった」と評価。後輩たちに希望をつなぐ試合にもなった。