まだ肌寒さが残る5月下旬の夜。都内の繁華街にあるバーのテラス席で、会社員の男性(28)は学生時代の友人に切り出した。
「自分のことをリベラルだと思っていたけど、社会人になってお金を払い出したら変わったわ」
物価の割に手取りの給料は上がらず、所得税や社会保険料も高いと思う。年金だって、将来そんなにもらえないなら本当は払いたくない。手に持ったグラスの酒をあおった。
法科大学院を出て、千葉県内にある大手企業で働き始めて2年目になる。
友人と別れ、スマートフォンを片手に混雑する下り列車に乗り込んだ。X(旧ツイッター)のトレンド欄を目でなぞりながら、下までスクロールする。政治や好きなサッカーの話題が目に留まる。最近は「外国人留学生にお金」「不法滞在」というトピックに目が行きがちになる。
政治のショート動画はあえて…
スマホは片時も手放さない。仕事をしている時を除けば「見ていない瞬間がない」。通勤、食事時、風呂にも持ち込む。使用時間を見ると、休日は13時間、平日も8時間使っていた。
YouTubeやゲーム実況の動画をスキップしながら見たり、ショート動画を流し見したりしている。
政治系のショート動画はあえて見ない。政治家が相手を「論破」するようなものが流れてくるが、「その瞬間しか切り抜かれていない」部分的なものなので、政治をそれだけで判断するのは怖いと感じるからだ。
最近はYouTubeチャンネル「ReHacQ」(リハック)をよく見る。政治家がスタジオに入ってくるところから映し出され、テレビニュースと違って「要約」されていない素の姿が見られるのが面白い。新聞は子どもの頃、両親が購読をやめて以降は、読まなくなった。
小さいころから勉強好きで、都内の私立中学を受験し、全国模試で上位に入ることもあった。特に現代文の論説文など、論理的な科目が好きだった。早稲田大に入ると、法律の勉強やサークルに打ち込んだ。
実家は「どんな人でも受け入れる」ような来客の多いにぎやかな家。家族の影響もあり、自由に選択できることや多様性が大事だという気持ちが自然と育まれた。
南アフリカの人種隔離政策アパルトヘイトの勉強をしていた母との話もきっかけになり、「外国人もどんどん受け入れた方が良い」と思っていた。人口減少が進む中、海外から人を受け入れないと日本は立ち行かなくなる心配の方が大きかった。
パラレルワールド@参院選【前編】
世代や立場によって情報を得る手段が異なり、見える景色の違いから選挙のたびに分断が加速する昨今。「パラレルワールド(並行世界)」のような情報環境が広がるなか、普段テレビや新聞といった「オールドメディア」に触れない人たちに、今回の参院選はどう映るのでしょうか。首都圏で働く若手会社員に聞きます。
YouTubeの動画、ふと浮かんだ疑問
そんな大学生だったある日…