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写真・図版
おおつちこども園(旧大槌保育園)の園舎の前に立つ八木沢弓美子=2024年9月、岩手県大槌町、三浦英之撮影

 「おおつちこども園」(旧・大槌保育園)の園長・八木沢弓美子(59)は1966年、北海道旭川市で生まれた。父親の仕事の関係で小学生の時に岩手県宮古市に転居。高校卒業後、盛岡市の短大を出て、大槌町の幼稚園教諭になった。

 95年から大槌保育園で勤務し始め、震災当時は副園長だった。春から園長になることが決まっていた。

 当時、園児は113人、職員は28人いた。元々は60人規模の園だったが、大槌町で保育所の再編があり、町立保育所と統合されて町内最大の保育施設になったため、2年前に移転、新築したばかりだった。

 八木沢は防火管理者の資格を持ち、避難訓練の担当を任されていた。町役場や消防署に出向いて避難場所について確認すると、園児の足では約15分かかる高台を助言された。しかし、建物がなく、雨風がしのげない。

 自治会長に聞くと、標高6メートルにある近くのコンビニに避難しているという。幹部で議論して、園もそこに避難することにした。

 園では毎月1回、避難訓練を実施していた。開始10分前に職員たちが靴を履き、定刻になったら「訓練です。園庭に避難してくださ~い」と声を掛け合い、「○組、無事です!」と報告するだけのお決まりの訓練。

 事前の打ち合わせでは、職員…

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