Smiley face
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 3カ国語を使い分けた落語で全国を笑いで包む。古典落語の「寿限無(じゅげむ)」は3カ国語を織り交ぜて、ポルトガル語で「まんじゅう怖い」を話す時はブラジルのお菓子「ブリガデイロ」に置き換えて。

  • 日系ブラジル人の子どもを支える臨床心理士、原点は幼い頃の「自分」

 働くために来日した日系ブラジル人の両親のもと、横浜で生まれた。家ではポルトガル語で、幼稚園に入った時は戸惑った。小学校の運動会に来た父に、日本語のイントネーションが変だ、何で?と騒ぐ子どもたちに父が言った。「実は私は宇宙人なんだ」。みながどっと笑った。笑いの力を知った瞬間だった。

 大学時代に短期留学した米・ロサンゼルスでのテレビ出演を機に夢は俳優に。だが、カフェで落語家のらぶ平さんの落語を見て、語りだけで何役も演じ分ける世界に魅了され、弟子入りした。師匠の「ら」、本名の綾音から「音」をとって芸名は「らむ音」にした。

 ポルトガル語と英語で落語の練習もし、落語会に来た欧米人に英語で「寿限無」を披露すると拍手喝采。「落語でスーパースターになりなさい」と師匠に励まされた。海外向けのオンライン配信や国際交流イベントのほか、ブラジル人学校でも落語を披露して子どもたちは大喜びだった。

 2022年に二つ目に昇進。かつての自分のように、外国にルーツを持ち、日本の生活になじめない子どもたちは多い。「日本語以外の言葉が話せるのは大きな強み。やりたいことに突き進んでほしい」。真打ちを目指し、多くの人に勇気と元気を届けたい。文・写真 平山亜理

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