長野県飯山市の住宅街で男女3人が襲われてけがをした問題を受けて、市内では10日もクマの捜索が続いた。住宅内でクマに襲われる事故は極めて珍しいといい、市は住民に外出を控えて戸締まりをするよう呼びかけている。
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県警や県などによると、クマは9日午後4時15分ごろ、飯山市常盤の住宅街に現れた。車庫で車の整備をしていた男性(65)が顔や頭をかまれたり引っかかれたりして重傷を負った。クマはさらに近くの住宅のガラス戸を割って室内に侵入。2階にいた男性(96)が側頭部などに重傷を負ったほか、女性(66)も脚に軽いけがをした。
クマは体長1メートルほどの成獣とみられる。その後、住宅から約250メートル離れた空き家付近のやぶに入っていくのが目撃された。
一夜明けた10日午前6時、県が委嘱したクマ対策員や猟友会員が空き家に立てこもっているとみて踏み込んだが、クマの姿は確認できなかった。付近からクマのものとみられる血痕が見つかり、北東~東の方向へ続いていたが、約1.5キロ離れた千曲川の堤防沿いで痕跡が途絶えたという。
捜索にはクマ対応の特別な訓練を受けた「ベアドッグ」やドローンも加わったが、10日午後7時現在、発見に至っていない。市内では10日、小中学校各1校と保育園4園が休校・休園になった。
市内では2023年10月、イノシシのわなを見に行ってクマに襲われたとみられる男性(当時80)が死亡する事故が起き、市はクマよけスプレーの実演講習会を市民向けに開くなどしてきた。10日夕に記者会見した江沢岸生市長は「全力でクマ対策をしてきたが、また起きてしまい無念と言うしかない」と話した。
今後の対策については「市民の安全第一で判断する」といい、専門家らの意見も聞き、痕跡が途絶えた近くの千曲川河川敷のやぶをドローンで調べたり、登下校時のパトロールをしたりする方針だ。
長野県は10日、北信地域に「ツキノワグマ出没注意報」を出した。注意報の発出は今季初で、期間は6月30日まで。
春のクマ対策のポイント
・山菜採りで周囲を確認
クマは春に草や木の芽を好んで食べるため山菜採りで遭遇する可能性がある
・親子のクマに注意
母グマは冬の間に産んだ子グマを1~2頭連れている可能性があり、子グマを守るために人間を攻撃することがある。子グマを見かけたらそっと立ち去る
・朝夕の行動は避ける
朝夕はクマが活発に行動するため山中に入るのを避ける
・犬を連れて山中に入らない
クマが犬にほえられるなどして人間を攻撃する場合がある
・笛、ラジオ、鈴を携行
クマは人間の気配を感じると避けるため、音の出る物を携行する
(長野県の資料から)