広島地方裁判所=広島市中区

 当時3歳の長男の両手足に粘着テープを巻き付けるなどしたうえ、医療を受けさせず一時重体にしたとして、逮捕と保護責任者遺棄致傷罪に問われた祖父の熊谷和弘被告(52)と母親の瞳被告(27)の公判が20日、広島地裁であった。検察側は「しつけではなくいじめ」として2人に懲役5年を求刑、弁護側は執行猶予を求めて結審した。判決は7月14日の予定。

  • 3歳児の手足に粘着テープ 転居してきた母子4人に行政の手届かず

 検察側はこの日の公判で、長男は自閉症や注意欠陥多動性障害があったと指摘。食事中に立ったりお茶をこぼしたりする長男への罰として、和弘被告は昨年6月ごろから食事を与えなくなり、今年に入ってからは食事は2日に1回だけになったとした。

 検察側によると、瞳被告は昨年5月ごろ、長男を含む3人の未就学児とともに和弘被告宅に転居してきた。和弘被告は弁護側の被告人質問に対し、「(瞳被告が)生活保護を申請しようとしたが、夫との離婚手続き中だったため受給できなかった。行政への相談は無駄だと思うようになった」と述べた。

 一方、瞳被告は検察側による被告人質問で「長男をかばったら、和弘被告から『(転居前に住んでいた)長崎に帰れ』と言われ、意見を言うのはあきらめるようになった」と述べた。また、病院に行かなかった理由については「虐待が疑われるのがこわかった」と説明した。

 弁護側は、2人が最終的に長男を病院に連れて行ったことなどから執行猶予付きの判決を求めた。

 起訴状によると、2人は昨年9~10月に長男の両腕と両足首を粘着テープで約5時間半縛るなどしたうえ、低栄養状態だった長男に適切な医療措置を受けさせず、心肺停止に陥らせて低酸素脳症にしたとされる。

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