現場へ! 園井恵子の青春⑤
「まるで夢を見ているようだわ」。今年7月、広島市内の一室で、被爆者・中村克子(96)は、記者と一緒に「無法松の一生」のDVDを見ながらつぶやいた。
「戦時中、広島市内の映画館で姉と一緒にこの映画を見たの。ヒロインを演じる園井恵子の美しさに憧れた。ああ、私もいつかこんな女性になりたいと」
8月6日に見た光景 あの中に……
1945年8月6日。17歳の中村は爆心地から約2キロの停留所にいた。爆風で川にたたき落とされ、浮き上がると、周囲が「血の池地獄」のようになっていた。当時着ていたセーラー服の襟の形に、今もケロイドの痕が残る。
「多くの人がけがをして『助…