Smiley face
写真・図版
北京市内にある民間の新型コロナウイルスのPCR検査場=2022年1月、平井良和撮影。デザイン・郭溢

 インターネット業界で働く張さん(女性、39)は今年、遺言書の作成を思い立った。弁護士のアドバイスを受けながら、大まかな下書きを終えた。

 きっかけは、同年代の芸能人や同僚らが突然の事故や病気で亡くなり、「大事な人に伝えたいことや心配なことを事前に整理したいと思った」からだ。

【前回はこちら】中国は「咱媽」?「東大」? ネットスラングが問う祖国との距離感

受験や結婚といった人生の転機や、経済やライフスタイルの変化を、中国の人びとはワンフレーズの漢字で巧みに表現しています。そんな新語・流行語が映し出す、中国社会のいまを読み解きます。

 書き始めると、「自分の心の奥」が分かった気がした。「母に生活に困ってほしくない」という思いから、父親よりも母親に多く遺産を。特に大事だと思った2人の友人には「旅行基金」として、旅行に行けるだけのお金を。自分が大切にしてきたフィギュアなどは、同じ趣味を持つ友人に――。

 遺言書を作成し、心の変化もあった。「旅行などしたいことは、後回しにせず今年中に機会をつくろうと思った」

 中国では不吉なことは口に出してはいけない、という伝統的な観念がある。自分の死去を前提とした遺言は不吉なもので、忌避する人が多かった。だが、そうした人々の心情に変化が現れている。

SNSでも遺言の情報

 「29歳、一人暮らし、遺言書を書きました」

 「90後(1990年代生ま…

共有