Smiley face
写真・図版
作品に近づくと無数のシラスが描かれているのが見える=2025年7月22日、北九州市平和のまちミュージアム、城真弓撮影

 北九州市の池田菜々香さん(22)=九州産業大大学院芸術研究科博士前期課程1年=が生のシラスを初めて食べたのは、学部生だった2024年の春。家族旅行で訪れた鎌倉でのことだ。

 おいしいと感じただけではない。透明でキラキラしていて、柔らかくて。ゆでた白いシラスでは今まで気付くことのできなかった「命」を、丼の上の生シラスから感じた。

 そこにあるはずなのに、見えない命――。池田さんは、シラスをきっかけに、地元・北九州市の歴史を思い出した。

写真・図版
「よんまんひきのしらす」を描いた池田菜々香さん=2025年7月22日、北九州市小倉北区、城真弓撮影

 その年の1月。市平和のまちミュージアムを訪れた池田さんは、かつて、地元に西日本最大級の兵器工場「小倉陸軍造兵廠(しょう)」があったことを知る。

 造兵廠では、風船爆弾などの兵器が製造されていたこと。最盛期には学徒ら約4万人が動員されていたこと。造兵廠があったために、原爆投下の標的とされていたこと。

 曽祖父が戦地で亡くなったと…

共有