前の日の晩は、そわそわして眠れなかった。
3年半かけて準備してきた新規事業のクラウドファンディングが、ついに始まる。
目標金額は1億円で、1カ月間で達成できなければ、事業は白紙に戻る。
書き上げた企画書や、事業案を取り上げてくれた記事を読み返して、気持ちを落ち着かせようとした。
結局、午前4時すぎまで眠ることができなかった。
4歳になった我が子を保育園に送り届けて、午前9時ごろに出社。
複数のオンライン会議に参加した後、クラウドファンディングがスタートする正午を迎えた。
フリーアドレスのオフィスの一角で、パソコンの画面を凝視する。
応援購入サイト「Makuake」に表示された「目標金額 100,000,000円」の文字。
キーボードのF5ボタンを押して再読み込みするたびに、現在の金額が更新されていく。
想定をはるかに上回る速さで増え続ける数字。
4分後、画面に「Success!」と表示され、1億円を達成した。
喜んでいると、周囲から「どうしたの?」と人が集まってきた。
これから購入者と20年かけて作り上げていく新規事業がスタートした瞬間だった。
きっかけは「柱の傷」
大学院でたんぱく質の構造に…