津市で母親(43)の虐待を受けた女児(当時4)が昨年5月に死亡した事件を受け、三重県は10日、児童虐待防止対応検討会議を開き、①体制づくり②関係機関との連携③人材育成を柱とする再発防止策を決めた。県の第三者委員会が行政機関の対応を検証し、3月末に提言した内容を踏まえた。
母親は女児を出産直後の2019年2月、県外の病院へ保護を求めた。女児は乳児院に預けられ、21年3月に母親が引き取った。提言は母子が長期間離れていたことなどを踏まえ、「子どもの愛着形成のための方策を確実に講じる必要がある」などとした。
再発防止策は、児童を一時保護するかどうかを判断する現行のリスクアセスメントシートに、出産の経緯や養育力をチェックする項目を追加▽乳児院に入所し、家庭復帰を予定する児童について、原則月1回以上の親子交流を実施▽施設などを退所する1カ月前までに市町に引き継ぎのための会議開催を求め、会議後に入所措置を解除する。
母親は女児が保育園に通っていた21年9月ごろから、手で押したり転ばせたりする暴行を事件までに約50回繰り返していたとされる。提言は「体重など身体状況の変化から予測される虐待の兆候と評価にかかる研修の実施」などを求めた。
再発防止策では、妊娠、出産から子育てまで一体的に相談支援する「こども家庭センター」の設置を市町に促進▽児童相談所(児相)全職員を対象に、提言への対応を徹底するための研修を実施▽保育士を対象に、虐待をテーマとした研修を実施する。
児相で16人の職員増
22年2月、女児にあざを見つけた保育園が児相へ通報した。その後、女児は登園しなくなるなどしたが、児相は対面による安全確認をしなかった。提言は「状況変化に応じたリスク再評価の確実な実施」「児相職員の人材育成」などを求めた。
再発防止策で、県は今年度上半期をめどに、児相職員の人材育成計画を策定するとしている。
県内では12年以降、3件の児童虐待死事件について、それぞれ第三者の検証委員会が関係機関の情報共有不足や危機意識欠如を指摘していた。今回も改めて同様の問題が指摘されたことから、県は今年度上半期の取り組み終了段階にも検証委に報告し、フォローアップ(進み具合の確認)をするという。
また、04年制定の県の「子どもを虐待から守る条例」について、一見勝之知事は改正を検討する考えを明らかにした。児童の対面確認や研修、関係機関の連携、AI活用などをきちんと盛り込みたい考えだ。
県は新年度、児童虐待への対応力を高めるため児相で16人、本庁で4人の職員を増員した。虐待の疑いがある在宅児童らの安全のため、目視確認の徹底や状況変化に応じたリスク再評価もしている。
一見知事は「子どもを虐待から守るため、ひとつずつきちんとスピード感をもってやっていくことが重要」と力を込めた。(高田誠)