奈良地裁=奈良市、金居達朗撮影

 奈良県橿原市で2023年、4歳だった女児を暴行して死なせたなどとして、傷害致死と傷害の罪に問われた母親の元交際相手、山下翔也被告(28)の裁判員裁判で、奈良地裁は19日、無罪(求刑懲役8年)を言い渡した。沢田正彦裁判長は「暴行以外の力が加わった可能性が排斥されたとは言えず、立証が不十分」などと述べた。

 山下被告は23年6月18日、橿原市の母親宅かその周辺で、田川星華さんの腹部を圧迫し、十二指腸に穴が開いたことによる腹膜炎で翌19日に死なせたなどとして起訴された。山下被告は起訴内容を否認し、一貫して無罪を主張していた。

 検察側は母親の証言などから、暴行が加えられたとする時間帯に、山下被告と星華さんが2人になる時間があったと主張していた。だが判決は、母親の証言が変遷しており、「信用性に疑問が残る」と判断。そのうえで、母親や被告が誤って足やひざで星華さんに力を加えた可能性は否定できないとも述べた。

 また星華さんに対する傷害罪についても、けがの原因は別にある可能性を指摘し、「山下被告の暴行により生じたことに合理的疑いが残る」とした。

 弁護人の幸田直樹弁護士は「単に疑わしいから罰するというのはだめだということを判断していただいた。どういう流れで亡くなったのか、今後明らかにしていただければありがたい」と話した。

 奈良地検の大前裕之次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応する」、県警の髙橋達雄捜査1課管理官は「コメントする立場にない」と話した。

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