滋賀県日野町で1984年に女性が殺害された「日野町事件」の裁判やり直し(再審)を求める集会が1日、同県彦根市であった。強盗殺人罪で服役中に死亡した阪原弘(ひろむ)・元被告の家族や支援者が、一日も早い再審開始を求めた。

 再審制度は、審理の長期化など問題がある。日野町事件は、大津地裁と大阪高裁が再審開始を認めたが、検察が最高裁に不服を申し立てる特別抗告をし、審理中だ。

 弘さんの長男、弘次さん(63)=彦根市=は、捜査の不自然さを挙げ、40年の闘いを振り返った。「父の逮捕で家族は奈落の底へ落とされ、長い闘いが始まった。父が生きていたら『一杯飲まんか』と会話できていたかもしれない。せめて父の名誉、無念だけでも回復したい」と述べ、再審無罪が決まるまで支援を訴えた。

父の再審開始を訴える阪原弘次さん=2025年3月1日午後2時30分、滋賀県彦根市、小西良昭撮影

 また、湖東記念病院(滋賀県東近江市)で死亡したの患者への殺人罪で服役後、再審で無罪になった元看護助手の西山美香さん(45)も、参加した。

湖東記念病院事件で再審無罪になった西山美香さんもエールを送った。左端は阪原弘次さん=2025年3月1日午後3時39分、滋賀県彦根市、小西良昭撮影

 西山さんは「滋賀にもう一つ冤罪(えんざい)事件があると、刑務所の中で知った。早く再審開始が認められ、無罪までとんとん拍子で行くといい」とエールを送った。西山さんは国と滋賀県に賠償を求めている。

再審開始を求めている阪原弘次さん(左)。湖東記念病院事件で再審無罪になった西山美香さんが隣に座った=2025年3月1日午後2時8分、滋賀県彦根市、小西良昭撮影

 主催者代表の元永佐緒里弁護士(滋賀弁護士会)は、証拠開示のルールや再審請求人側の権利がないなど、再審制度の問題点を説明し、刑事訴訟法の改正が必須だと説明した。

1984年の日野町事件とは

 日野町事件 1984年12月、滋賀県日野町で酒店経営の女性が殺害されて金庫が奪われた。任意の取り調べで自白したとして阪原弘(ひろむ)・元被告が88年に逮捕された。裁判で無罪を訴えたが、2000年に強盗殺人罪で無期懲役の判決が確定。裁判をやり直す再審を求めたが、受刑中の11年に75歳で亡くなった。

 遺族も再審を求め、18年に大津地裁が、23年に大阪高裁もそれぞれ再審開始を認め、検察が最高裁に不服を申し立てている。

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