(5日、第107回全国高校野球選手権東・西東京大会)
足を踏み入れた瞬間、思い出がよみがえってきた。「ここを目指して、やってたんだな」。まるで、高校時代にタイムスリップしたかのように。今年、新設された東京都高校野球連盟の特別功労賞に選ばれた佐宗功さん(63)は、5日の表彰式に参加するため、46年ぶりに神宮のグラウンドに立った。
八王子市出身。大成では1年から背番号をもらい、西東京大会には3年連続で出場した。1979年、主将だった3年の開会式は、「最後の夏。また神宮に戻ってくるという気持ちだった」。結局、3回戦で敗れ、勝ち進んで神宮でプレーする夢はかなわなかった。
開会式で行進した、あの夏以来の神宮のグラウンド。仲間と撮った集合写真、スタンド、外周で撮った友人との写真……。景色は変わっても、思い出は変わらないまま。「やっぱり、神宮が一番好きですね」
大学卒業後、八王子市職員に。念願かなって2017年からスポーツ施設管理課に異動になった。高校野球の時期は、スリーボンドスタジアム八王子のグラウンドキーパーを務める。「ケガなくプレーできますように」。そう願いをこめながら、春も夏も秋も、朝早くからグラウンドを整備する。石ころ一つ、取りこぼさないように。「当番でトンボかけをしていた1年生たちが、3年になって『佐宗さん、背番号もらったよ』って背中を見せてくれてね。子どもたちの成長がうれしくて」
6日は、孫の五十嵐琉星ちゃん(5)とバッテリーを組んで、始球式を行った。「まさか孫のボールを捕れるなんて。昨日は神宮に戻ることができて、今日は八王子で始球式をやらせてもらった。この仕事を続けてきてよかった」
スリーボンド八王子は仕事場でもあり、高校時代、よく打った「ホーム」でもある。思い入れのあるグラウンドで、家族に見守られながら、孫の球を受けた佐宗さん。高校野球の思い出が、また一つ増えた。