合同練習をした、釜石高校吹奏楽部と「オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ」の3人の演奏家=2024年5月25日午後4時15分、岩手県釜石市の釜石高校、東野真和撮影
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 岩手県立釜石高校の吹奏楽部・音楽部員は6月2日、大阪のプロ吹奏楽団「オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ」の有志とジョイントコンサートを開く。東日本大震災の被災地を支援するため、大阪の企業団体が企画した。コロナ禍による延期を経て、「私たちは忘れない」という思いが5年越しに届けられる。

 コンサートに先立つ25日、出演するシオンの石井徹哉さん(45)=トロンボーン、古賀喜比古さん(45)=クラリネット、高鍋歩さん(51)=打楽器の3人が同校を訪れた。「まず自分をチューニングしよう」「昭和の歌はダサい音で」などと心に響く言葉で指導した後、合同練習をした。

 石井さんは「指導するうちに音がどんどん変わっていくのを感じた」と手応えを語った。石井さんと同じトロンボーンを隣で一緒に演奏した阿部七緒さん(3年)は「音質も音圧も全然違った。うまい人と吹くとうまくなったような気がした」と感謝した。

 高鍋さんは阪神大震災で神戸の実家が被災した経験がある。「とにかく、のびのびやろう。それだけ」と生徒たちに呼びかけた。

 コンサートは「中之島ウエスト・エリアプロモーション連絡会」(朝日新聞社など8社で構成)の音楽イベント「中之島まるごとフェスティバル」で寄せられた募金で運営される。

 同会は2014年から東北の被災地に計4台のピアノを贈っており、最初の1台が釜石高校に届けられた。その後、「オトノチカラプロジェクト」として支援を被災地での音楽交流に改め、19年4月にシオンの3人が岩手県大船渡市を訪れ、大船渡東と大船渡の両高校の吹奏楽部員を指導してコンサートを開いた。

 釜石高校とは20年春に交流予定だったが、コロナ禍で延期が続く間、シオンのメンバーはリモートで吹奏楽部員にレッスンをした。

 コンサートでは、「オトノチカラ」のオリジナル曲「私たちは忘れない」が披露される。大阪音楽大学の高昌帥(コウチャンス)教授が作曲し、22年にシオンが定期演奏会で初演した。楽譜には吹奏楽、声楽に加えてピアノのパートがあり、寄贈されたピアノによって奏でられる。声楽パートは音楽部員が歌う。

 古賀さんは「中之島からの被災地応援は10年も続いている。『忘れない』との思いを感じていただければ」と語った。

 吹奏楽部顧問の落安成美教諭は「プロに直接指導を受けるいい機会をいただいた。音楽を通じた支援は市民にも楽しんでいただけるので意義がある。ピアノが贈られてから色んな人がつないできた思いを演奏で表したいので、ぜひ聴きに来てほしい」と来場を呼びかけている。

 コンサートは釜石市民ホールで6月2日午後2時開演、無料。(八田智代、東野真和)

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