作家・有吉佐和子(1931~84年)の連作短編集「青い壺(つぼ) 新装版」(文春文庫)が、オリコン、日販、トーハンの2025年上半期ベストセラーランキングの文庫部門で1位になる「3冠」に輝いた。11年の復刊から58万1千部を発行し、うち約50万部は直近2年半ほどで増刷された。初出から50年近くになる作品が、時代を超えて読み継がれる背景は。
「青い壺」は、月刊文芸春秋の1976年1月号~77年2月号に13回にわたって連載された小説だ。77年4月に単行本になり、80年に文庫化されたが、98年1月を最後に重版が途絶えて品切れになった。その後、2011年に「新装版」として復刊された。累計発行部数は83万6千部に上る。
各話は家庭や職場などを舞台に、夫婦や親子らの揺れ動く心中や人間模様を描く「ホームドラマ」のような内容だ。連続性はないが、第1話で陶芸家が手がけた青磁の壺をデパート社員が引き取っていくのを皮切りに、退職した勤務先の元上司に贈られたり、空き巣に盗まれたり。美術評論家がスペインで見つけて、日本へ持ち帰って……。意表を突いて登場する青い壺が各話を貫いていく。
■背表紙見た編集者「美術関係…