Smiley face
田中千絵さん

 「理想的な母」になろうと疲れてしまう、大きくなった子どもにあれこれ関与しすぎてしまう――。そんなことはありませんか。母としての、時に過剰な役割を終わらせ、自分の生き方を取り戻す。そんな「卒母」に取り組むグラフィックデザイナーの田中千絵さん(50)に聞きました。

 ――この春、「卒母のためにやってみた50のこと」という本を出版されました。「卒母」とはどういうことでしょう?

 簡単に言うと、子どもが思春期にさしかかったら、母は過剰な役割を自分で引きはがし、子の「自立」を促していきませんか、というアイデアです。

 私自身、大学生と高校生の母です。29歳で出産し、デザイナーの仕事をしながら「良妻賢母」や「丁寧な暮らし」を自分なりに頑張ってきました。

 ただ、コロナ禍で家族みんなが家にいるとき、家族の距離がとても近く、ふと自分は家や子どものことをやり過ぎているのではないかと気づいたのです。

 ――具体的には何をやり過ぎていたのですか?

 日々の炊事洗濯から、トイレットペーパーを補充するといった夫や子どもが気づきにくい庶務的な家事、家族内外の様々な連絡の「ハブ」役などです。家族の不機嫌を逐次、拾おうとしてダメージを受けることもありました。考えてみたら、家事にとどまらず見えない役目がたくさんありました。

 ――すごくわかる気がします。

 子どもの成長とともに、自分も中年期を迎え、気力や体力も若いときのようにはいかなくなってきたことにも気がつきました。ここは、自分が担っている役割を見直し、私も自らの生き方や時間の使い方を模索するときなのではないかなと思いました。

 それで「卒母します!」と家族に宣言しました。

母の自己犠牲 「手作り神話」一つとっても

 ――「過剰な役割」はどこから来るのでしょうか。

 例えば、「おまえ母親だろう…

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