南極への経路を示す世界地図の前に立つ長浦紀華校長=2025年3月7日、福島小学校、野田一郎撮影

 国立極地研究所の教員南極派遣プログラムに校長として初めて参加した北海道福島町立福島小学校の長浦紀華(のりか)校長(56)が、約3カ月間の日程を終えて帰国した。昭和基地から2回にわたりオンライン授業をした。子どもたちに何を伝えられたのか。南極行きの成果を聞いた。

 ――南極からの授業で、特に子どもたちに伝えたかったことは何ですか。

 「研究者だけではなく、研究や基地での生活を支える人たちの仕事を紹介することに時間を割きました。どんな仕事にも価値や意義があること、自分のミッション(任務)を意識し、心を込めて仕事をする大切さを、子どもたちに知ってほしかった」

 「隊員には知識や技能はもちろん、あきらめずに粘り強く取り組むための精神力と体力がある。さらに隊としてのミッションが円滑、確実に遂行できるよう、限られた人と物の中で協力し合い、知恵を働かせて工夫し、経験したことがなくても挑戦して自分にできることを増やすことが求められる。これらすべてが、子どもたちの今後の人生で備えなければならない能力なのです」

 ――地球環境の問題も取り上げました。

 「ペンギン、気象、海洋プラスチック汚染などの研究の現場を取材し、研究者の生の声を伝えました。地球環境の変化の原因は多岐にわたり、解明には長い年月をかけた継続的な観測や研究が必要であることをわかってもらえたと思います。南極では残してよいものはなく、野外へ行ったらゴミだけでなく排泄(はいせつ)物も持ち帰ります。人間が考える便利さや快適さを優先すると、地球に大きな負荷をかけることを知ってほしい」

 ――校長が南極に行くことで子どもたちに自分の将来を考えるきっかけを与えられたでしょうか。

 「渡航前の特別授業で、子ど…

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