ピアニストの高橋アキさん

 ドイツの地方の教会で、全部で600年以上かかるというオルガン曲の「演奏」が続いています。600年も先の私たちの子孫とこの曲を通じてつながるのだと考えると、未来がちょっといとおしく思えてきます。この曲の完遂される時代の平和を願いたくもなります。

 この曲を作曲したのはジョン・ケージさん。「4分33秒」など、私たちの凝り固まった常識をある種の反則技で次々と覆した、米国を代表する20世紀の現代作曲家です。ケージさんの最良の理解者だったピアニストの高橋アキさんも、一見堅苦しく感じられる現代音楽の世界をのびのびと心楽しく疾駆しています。盟友が残した、ひとりの人生を超えて未来へと続いていく長い長い曲について、高橋アキさんは今どんなことを感じているのでしょうか。

リレーおぴにおん 「つづく」

 ドイツの教会で、2001年からジョン・ケージのオルガン曲が「演奏」され続けているらしいわね。ケージとは親しかったけれど、この曲のことはよく知らないの。全部で演奏に639年かかるんですって?

 機械仕掛けのふいごでパイプに空気が送られ続け、常に何かの音が鳴っていて、数年おきにコードを変えるタイミングが現れる。恭しくパイプを入れ替える瞬間を見たがる観光客が増えているそうなんだけど、やっぱりケージはアイデアマンね。現代人は時間に管理されているから、逆に突き抜けて遊んじゃおうってこと。大人たちが、大マジメにばかばかしいことをやるのがいい。遊びをせんとや生まれけむ。それに、絶対に立ち会えない未来のことを考えるのって、無責任だけど夢がある。

 長く続く曲といえば、ひとつ…

共有
Exit mobile version