運転免許の返納を決断した祖母のイラスト=ハチ子さん提供

 今から5年前、ハチ子さんの祖母が車の運転免許を返納した。

 75歳を超えて後期高齢者になっていたが、地方都市で車は必需品。

 電車は1時間に1本で、駅まで歩くと30分はかかる。

 バスも走っておらず、買い物にも通院にも車が欠かせない。

 一方で、高齢者が引き起こした悲惨な事故のニュースが後を絶たない。

 ニュースを見たのがきっかけで、祖母を囲んでの家族会議が開かれた。

 「免許更新時の認知機能検査ではトップクラスの成績だったんでしょ」

 「でも、実際の運転はやっぱり違うんじゃない?」

 「何かあってからは取り返しがつかないし……」

 家族から意見が出る中で、すでに祖母の気持ちは固まっていた。

 「人様に迷惑をかけてからでは遅い。返そうと思う」

 家族会議と聞いてあらかじめ決心していたようで、説得する場面はなかった。

 話し合ったのは、どうやって祖母をサポートするかということ。

 祖母が自由に行動できなくなる分、家族が交代でフォローすることを決めた。

免許返納の前日に

 免許を返納する前日、祖母と娘(ハチ子さんの母)でドライブに出かけた。

 最後の運転を楽しむため……と思わせておいて、実は、家族ぐるみのサプライズだった。

 まずは娘がハンドルを握り…

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