Smiley face
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バレーニキを作る降簱英捷さん=2025年7月3日、北海道旭川市、新谷千布美撮影

 湯気の立つ水ギョーザが並ぶ。少し黄色い。

 「卵を入れて皮を作ったんですよ」

 ロシア語の通訳を通じて説明してくれたのは降簱英捷(ふりはたひでかつ)さん(81)=北海道旭川市。記者が訪ねると、手料理を振る舞ってくれた。メインは「ウクライナのギョーザ」ともいわれる家庭料理「バレーニキ」だ。

 中には、マッシュポテトと豚ひき肉が入っていた。ひき肉は50年以上使う小型の肉ひき機で、塊肉から作ったという。

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ウクライナの家庭料理「バレーニキ」。降簱英捷さんが作った=2025年7月3日、北海道旭川市、新谷千布美撮影

 別の種類を食べると、今度は甘く酸味がある。カッテージチーズだった。「これも牛乳から手作りしたよ」

 付け合わせは、キャベツとキュウリのサラダ。初めて食べる爽やかな香りがした。でも隠し味は……。降簱さんが冷蔵庫から取り出したのは、だしじょうゆだという。

 「どれもおいしい!」。思わず声を出すと、降簱さんは笑顔でうなずいた。簡単な日本語の会話は聞き取れる。しかし使い慣れているのは、ロシア語だ。

 ロシアのウクライナ侵攻、そして80年前の第2次世界大戦に翻弄(ほんろう)された人生。「戦争がどのようなことを人々にもたらすか、どんな生活や人生が待っているのか、考えてもらえたら」と、今年、手記を出版した。

 1943年、日本領だった南…

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