その部屋には、食べかけのカップ麺やスナック菓子の容器、空のペットボトルが放置され、トイレの便器内の水は黒く濁っていた。
当時8歳の長男を2カ月あまり自宅に置き去りにしたとして、保護責任者遺棄罪に問われた母(26)は「現実から背を向けて、交際相手方に逃げてしまった」と供述した。
横浜地裁小田原支部で4月17日に開かれた初公判。被告は、黒い上下の服をまとい、ピンク色のサンダル姿で現れた。裁判官から、生年月日や本籍地などを尋ねられると、「はい」とか細い声で答えた。起訴内容については、置き去りにしたこと自体は認め、「本当に息子には申し訳ない」と述べた。
法廷では、「現実逃避」という言葉だけでは割り切れない思いが明らかになった。検察側の冒頭陳述などから、経緯をたどる。
被告は2022年3月ごろ、結婚を機に栃木県内の実家から神奈川県平塚市に引っ越し、長男や当時の夫と共同生活を始めた。
翌23年1月ごろから、派遣社員として家電量販店で働くようになり、職場で男性と知り合った。週2回程度、男性宅を訪れ、宿泊したり、夜中や朝方に車で送ってもらったりしているうちに同年夏ごろ、当時の夫と離婚することになった。
家に帰らなかった理由は
弁護人「離婚後、実家からの…