終戦直後の1945年8月28日。日本海に突き出た秋田県の男鹿半島の山中に、米軍のB29爆撃機が墜落した。戦後80年の今年、秋田市在住の探検家の高橋大輔さん(58)が6年がかりで山中から機体の残骸を発見し、主脚の一部と突き止めた。
高橋さんは、2005年に南米チリ沖の島で、ロビンソン・クルーソーのモデルの居住地跡を発見したことで知られる。東京の大手広告会社を退職後に帰郷して探検家に転じ、浦島伝説やサンタクロースなどの神話や伝説を現実の世界で検証するスタイルを得意とする。
高橋さんによると、今回発見したB29は花岡鉱山(秋田県大館市)にあった捕虜収容所に食料などの救援物資を届ける途中、男鹿市の本山(標高715メートル)の中腹に墜落した。悪天候などが原因とされる。乗組員12人のうち11人が死亡したが、唯一の生存者で当時19歳だったノーマン・マーチンさんが地元住民によって救出された。
マーチンさんはその後、地元の小学校で手当てを受け、帰国。墜落から45年後の1990年には地元の招きで来日し、現場を訪れて関係者らと交流を深めた。マーチンさんは2012年に亡くなったという。
「戦争の記憶を伝えるため、機体を捜し出してほしい」――。
高橋さんが「山中で機体を見た」という知人から依頼を受けたのは18年のこと。1枚の写真を見せられ、そこには茶色くさびた鉄の塊が写っていた。
「戦争にまつわる歴史が埋もれてしまうのは残念。墜落から時間が経ち、機体を見つける最後のチャンスだと思った」。高橋さんは依頼を受けることにした。
記憶頼り、コロナ禍……捜索は難航するも
だが、知人が見たのは20年…