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北方領土を紹介する冊子を前に、島の思い出を語る紙屋夏子さん(右)と東狐百合子さん=2024年3月2日、富山県黒部市
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 約80年前の終戦後、北方領土の島から富山県内に引き揚げた人は、約1400人と北海道に次いで多い。元島民や後継者は返還を求めつつ、交流などで現地を訪れてきたが、日ロ関係が悪化し行き来は中断。先が見通せないなか、「領土問題を知ってほしい」と島の記憶を伝えている。

 同県入善町の入善西中学校で2月、2年生約100人が参加する北方領土学習会があった。講師は、元島民らでつくる社団法人「千島歯舞(はぼまい)諸島居住者連盟」富山支部の人たちだ。

 「長い昆布を1本ずつ並べて干すのを手伝った。真っ白い砂の、きれいな浜でね」。紙屋夏子さん(83)=黒部市=は、のどかだった暮らしを紹介した。幼い頃、昆布漁に携わる両親とともに、春から秋の間は歯舞群島の志発(しぼつ)島に住んでいた。

 忘れられないのは終戦後、旧ソ連軍が侵攻してきたことだ。「兵隊が大きな鉄砲を持って家に入ってきた。母ちゃんが連れてゆかれるのが心配で、しがみついた」。涙声で語ると、生徒はうなずきながらメモを取った。

 学習会の最後に、生徒の代表…

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