(22日、第107回全国高校野球選手権北北海道大会十勝地区2回戦 白樺学園4―3帯広三条)
意表を突く形のセーフティーバントだった。
九回裏、1点を追う帯広三条。先頭打者の湯佐星真主将(3年)は、初球に対し、ちゅうちょ無くバットを横に倒した。三塁線ギリギリに転がった打球は相手守備のエラーも誘い、一気に無死二塁の好機をつくった。帯広三条スタンドのボルテージは最高潮に達した。
普段はやらないが、中学時代はよく使っていたという奇襲策だった。「先頭打者で絶対に出塁しないといけない。ファウルでもいいとチャレンジした。良いところに転がってくれた」
昨夏の甲子園出場校である白樺学園を相手に、帯広三条は「勝てば甲子園に行ける」と、強い思いで臨んだ。初回に先制点を奪われたものの、その裏、4安打を放ち逆転。三回は3点を失うが、裏にすかさず2安打で反撃し、追いすがった。
打撃の意識改革。きっかけは春の地区大会で、帯広大谷にコールド負けしたことだった。強い打球をめざした打撃練習を改め、どういう打球が安打になるかを意識してきた。その成果が試合に出た。
九回裏、湯佐主将の出塁後、逆襲の機運は相手の救援投手に断たれた。湯佐主将は、最後の打者がサードゴロに倒れた間も、本塁まで走り切り、ひざをついた。
「緊張感の中、楽しいと思って出来た試合でした」。湯佐主将に涙はなかった。