Smiley face
写真・図版
卒業式で花束を贈られる西田正江さん=2025年3月14日、奈良県橿原市、塚本和人撮影
  • 写真・図版

 97歳の女性が、10年ほどかけて通った夜間中学を卒業した。小学校に満足に通えず、80歳を超えて一念発起して、こつこつと学びを続けてきた。3月14日に仲間とともに晴れの卒業式を迎え、「今日卒業しますが、また会いましょう」と静かに語った。

 卒業したのは奈良県大和高田市に住む西田正江さん。西田さんが通った同県橿原市の市立畝傍中学校2部(夜間学級)の担任の教員(66)によれば、西田さんは1927(昭和2)年、大津市生まれ。7人きょうだいの長女だった。

 「女はあまり勉強せんでもいい」。母からそう言われ、小学生の時から妹の世話や家事を任された。体が弱かったこともあり、3~4年生以降は、学校にはほとんど通えなかった。

 小学校を卒業すると、大阪の紡績工場に働きに出ることになった。戦時中は空襲を経験し、大津まで母親の引くリヤカーを押して3日かけて疎開した。終戦後は大阪の工場のまかないの仕事に就き、23歳で家具職人の男性と結婚。奈良に移り住み、4人の子どもを育てた。

 読み書きは独学で学んできたが、ずっと自信を持てずにいた。子どもたちも成長し、学校教育を受けたいという気持ちが強くなった。2015年7月、知人の紹介で夜間中学の門をたたいた。

生きてきた意味を振り返って

 夜間中学の授業は午後5時半…

共有