「WHILL」に試乗する高齢者=4月25日、和歌山市、WHILL社提供

 75歳以上が運転免許を更新する際に認知機能検査の受検が義務づけられてから15年が経った。合格率は平均97.6%で実効性に疑問の声もある一方、高齢者事故防止では追加の対策が取られ、新たな乗り物も登場する。16日は敬老の日。お年寄りの足はどうなるのか。

 9月中旬の平日。鮫洲運転免許試験場(東京都品川区)の廊下で20人ほどの高齢者が列を作っていた。免許更新で認知機能検査を受けるためだ。

 検査を終えた東京都中野区のコンサルタント業の男性(81)は合格したが、「まさかこんなに認知機能が落ちているとは」と落ち込んでいた。

認知機能検査の試験。4枚ずつ計16枚の絵を見て、何が描かれていたか記憶する=2024年9月12日午前11時15分、東京都品川区、御船紗子撮影

 検査は、ヘッドホンから流れる説明を聞きながらタブレット端末に表示された16枚の絵を覚え、何の絵だったか書き出していくという流れだ。ランダムに並んだ100個の数字の中から、特定の数字に斜線を引くという問題もある。加点方式で、正答が36点を超えた時点で合格となり終了する。

「自主返納を考えたい」

 この男性は16枚の絵のうち4、5枚を思い出せなかった。3度目の受検で、受けるたびに成績が落ちているという。「人生の最後に事故を起こしたくない。自主返納を考えたい」

 認知機能検査が、免許を更新する75歳以上に義務づけられたのは2009年。高齢者が当事者となる死亡事故が相次いだことが背景にある。検査に不合格となると医師の診断を受けなければならず、認知症と判断されれば免許は更新できない。

鮫洲運転免許試験場では、受験者が1人ずつ机に座り、タブレット端末で認知機能検査を受ける=2024年9月12日午前11時26分、東京都品川区、御船紗子撮影

 杏林大名誉教授(精神生理学)の古賀良彦さんによると、車の運転は「脳の様々な力を同時に使う高度な作業」だ。記憶力のほか、人や車との距離をつかむ視空間認知機能▽注意力▽判断力が求められる。これらは加齢とともに低下して事故のリスクが高まる。検査で能力を測ることは有効だという。

 警察庁によると、制度導入以降の年ごとの合格率は96.3~98.7%。古賀さんは「高すぎる合格率は検査を形骸化させてしまう」と懸念する。

出回る「完全攻略」の対策本

 鮫洲の試験場には、事前に対…

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