現代アートの島として世界中から人々が訪れる香川県の直島。先月末、ここに新たに「直島新美術館」が加わった。安藤忠雄さんの設計で、展示の軸はアジア美術。直島のアート展開を手がけてきた福武總一郎・福武財団名誉理事長は自身の活動の「集大成」と位置づける。
99匹のオオカミが列をなして透明な壁に飛びかかるもののはね返され、しかし何度も挑み続ける。
そんな光景を作り出す、蔡國強さん(中国出身)の壮大な空間作品は、2006年のベルリンでの個展に合わせて制作され、ガラス壁の高さはベルリンの壁と同じ。福武さんは「国や地域の壁があっても、やり直そう」と解釈し、作品の持ち主と交渉して購入した。
地上1階、地下2階の建物の最深部の巨大展示室を占め、安藤さんが「広い空間の中で動いているように見せたい」と考えた、建築の起点となるような大作。直島における安藤建築としては10件目だが、地中美術館などの先行する大型施設は集落とは離れた景観の中で欧米や日本の現代美術を見せてきた。対して新美術館は、町役場のある集落に接した教員宿舎跡にある。
福武さんは、自然と共に生き…