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 入居済みの新築一戸建てが立ち並ぶ、まだ新しい住宅地。建設さなかの住宅もあり、複数の有名ハウスメーカーの看板がみえる。

 広島県内。JRの駅から車で数分の郊外で、宅地開発が進む。その一角に、造成されて整地されただけの土地が広がる。

写真・図版
所有者の所在がわからない土地があった一帯は、まだ整地された状態だった。近隣のエリアには、すでに新築一戸建てが立ち並び、新しい住民の暮らしが始まっている=2024年12月13日、広島県、山田史比古撮影

 ここで、「問題の土地」が見つかった。

 「これ、どうにかなりませんか」

 開発を手がける地元の不動産業者から、ある司法書士事務所に相談が寄せられたのは、2年ほど前のことだ。

困った登記簿

 一帯の土地を購入し、開発を進めるなかで、困った登記簿にいきあたったという。

 不動産の所有権など権利関係を記載する登記簿。そのうち「表題部」と呼ばれる最初の部分には、どの土地のことかを特定できるように、所在地や地番、面積や、所有者の氏名と住所などが記されている。問題の土地の面積は、約140平方メートル。土地の用途区分を示す地目は山林となっていた。

 問題は、所有者の欄にあった。

 名前は書いてある。漢字2文字の姓は少し珍しい組み合わせで、何と読むのか。名はいつの時代か、明らかに昔風だが、男性だろう。住所は何も書かれていない。空白だ。近隣の人に聞いてみても、その人のことは誰も知らない。これでは、土地を売却してくれないか交渉しようにも、連絡のとりようがない。そもそも名前からして、存命でもない可能性が高そうだ。誰かが相続したのか、いま誰が土地を管理しているのかもわからない。

 すでに周辺は開発のために購…

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